『Harness Engineering for AI Agents: Re:Zero』を出版した後、Leanpub共同創業者Len Eppからインタビューの依頼をいただきました。英語に自信がなく迷いましたが、本とNaiaを紹介できる機会だと思い、引き受けました。この本は、Naiaに適用したハーネスエンジニアリングの事例を紹介し、Naiaのオープンソースプロジェクトに気軽に触れられるよう手助けする入門書として執筆しました。電子書籍の利点を生かし、実際の開発過程で得た知見を継続的に加えていきたいと考えており、最近、その約束を果たす形で**第2版(2026.08.03)**へ更新しました。韓国語版もWikiDocsに反映しています。
英語インタビューの準備では、AIと想定質問を整理しながら回答を磨いていくことで、Naiaと、私が作りたいAIに対する考えも一つの流れとしてまとめることができました。実際のインタビューは二つの重要な質問を中心に短く進みましたが、準備資料には放送で語りきれなかった内容が数多く残りました。そこで、インタビュー準備稿の全文を公開するとともに、その内容をNaiaで使った技術を活用し、英語によるAI模擬インタビュー動画にもしました。動画は事前にLenへ送り、内容の確認と公開の許可を得ています。
口の動きがやや不自然な箇所もありますが、さらに手を加えるより、これまでの過程と成果をそのまま共有することにしました。AIと英語インタビューを準備する一つの方法として、少しでも参考になれば幸いです。
1. Leanpub Launchでの実際のインタビュー
Leanpub共同創業者Len Eppと実際に行ったインタビューです。動画は、二つの重要な質問が始まる場面から再生されます。
2. インタビュー準備稿の全文をもとに制作した英語の模擬インタビュー
実際の通話を録画・書き起こししたものではありません。インタビュー前に作成した準備資料の全文を英語の対話形式にした、AIによる再現です。
エピローグ――書籍で語りきれなかったNaiaの話
モデル一つだけでは「自分のAI」にはなれません
AIをめぐる多くの議論は、モデルの性能に焦点を当てています。しかし、私が作りたいAIは、モデル一つだけでは説明できません。ユーザーを記憶し、いま取り組んでいる作業の文脈を理解し、必要なツールを使い、許可された範囲内で働き、その結果を確認できる必要があります。
私の言う「自分のAI」とは、単に自分との会話が上手なAIではありません。ユーザー自身が、そのAIの記憶、記録、設定、人格、作業の文脈を管理できるAIに近いものです。他社のサービス内でひととき会話して終わる関係ではなく、ユーザーの選択に応じて、ずっと一緒に働けるAIを作りたいと考えています。
小さなモデルには、より明確な仕事が必要です
小さなモデルやローカルモデルの限界を隠すつもりはありません。モデル間に能力差があることは明らかで、モデルを取り巻く仕組みをうまく設計したからといって、あらゆる小型モデルが大規模モデルと同等になるわけでもありません。
ただし、小さなモデルに、より明確な文脈と適切なツールを与え、責任範囲を狭く明確に定め、結果をより厳しく検証すれば、特定の仕事をはるかに安定して任せられます。モデルが小さいほど、こうした周辺の開発・検証体制が重要になる――それが、書籍を書き、Naiaを作るなかで確かめてきた考えです。
ローカル志向は、クラウドを拒むという意味ではありません
Naiaはローカル志向のプロジェクトです。だからといって、クラウドAIや大手テクノロジー企業のAIを使うべきではない、という意味ではありません。必要に応じて、優れたモデルやサービスを利用できるべきです。
私が重視しているのは、ユーザーの選択権です。記憶や記録、設定、作業の文脈など、個人にとって大切な情報は、可能な限りユーザー自身が管理できる必要があります。インターネット接続がない環境や、外部サービスへ資料を送れない環境でも使えるべきです。ローカルとは、単なる製品のスローガンというより、ユーザーのコントロール権を守るための方向性なのです。
Naiaは、アバター付きチャットボットで終わりません
Naiaは、ローカル志向のビジュアルAIエージェントであり、ワークスペースでもあります。画面上のキャラクターはNaiaと気軽に出会う入口になりますが、長期的な目標は、アバター付きチャットボットを一つ作ることではありません。
ユーザーを記憶し、ツールを使いながら一緒に働きつつ、重要なデータと判断はユーザー自身が管理できるAIを作りたいと考えています。そして、その過程をオープンソースとして公開することで、誰かが完成品を消費するだけでなく、自ら理解し、修正し、自分のAIを作ってみられるようにしたいのです。
この本が伝えようとしていること
『Harness Engineering for AI Agents: Re:Zero』の主張は、AIがどれほど多くのコードを、あるいはどれほど速く作れるかという点にはありません。AIが生み出した成果物を人が理解し、レビューし、テストし、問題が起きたときに、どこで間違えたのかを追跡できてこそ、実際のソフトウェア開発を任せられる――それが出発点です。
モデルを取り巻く文脈、ツール、作業範囲、権限、テスト、レビュー手順を一体として設計しなければならないという意味で、これをハーネスエンジニアリングと呼びました。とはいえ、あらゆるプロジェクトに通用する正解を提示しているとは考えていません。この本は、NaiaをAIとともに作り直しながら、何がうまくいき、何が失敗したのか、どのようなルールや確認方法が必要だったのかを記録した現場報告書に近いものです。
Naiaがオープンソースであるように、この本も一度出版して終わる解説書ではなく、ソースコードとともに変化する生きた教科書になってほしいと願っています。ソースで新たな問題に出会えば書籍の説明を修正し、書籍で整理した原則は再び実際の作業で検証します。
書籍が主にこの開発方法を説明するものだとすれば、インタビュー準備資料は、私がなぜNaiaを作り、どのようなAIを作りたいのかを補足するものです。それが今回、準備資料の全文をエピローグに収録する最大の理由です。この本は公開書籍なので、購入しなくてもオンラインで読むことができます。
AIと英語インタビューを準備した方法
今回の準備では、AIを英語の回答を書いてもらうためだけのツールとして使ったわけではありません。インタビューについて調べ、自分の考えを短い文にまとめ、理解できなかった表現について聞き直し、音声で練習するところまで、一連の流れで活用しました。
1. AIと一緒に、インタビューの形式と範囲を先に調査
最初にAIへ渡した資料は、Lenから届いたインタビュー依頼のメールでした。Leanpubの公式案内と最近のインタビュー事例を調査し、想定時間、進行方法、質問範囲を整理しました。何を準備すべきかを先に決めたことで、際限なく想定質問を作ることを避けられました。
2. AIによる要約:必ず伝える内容を三つの文に絞る
質問と回答をたくさん作るよりも、どのような質問を受けても立ち戻れる軸が必要でした。私が用意した文は、次の三つです。
- A model alone is not an agent. An agent needs a harness around the model. モデル一つだけではエージェントにはなりません。モデルの周囲に開発・検証体制が必要です。
- Harness engineering becomes even more important when we use smaller or local models. 小さなモデルやローカルモデルを使うほど、モデルを取り巻く開発・検証体制がさらに重要になります。
- Naia is open source, and the book will evolve as a living textbook for its source code. Naiaはオープンソースであり、この本はソースコードのための生きた教科書として進化し続けます。
実際の質問が予想と違っても、この三つの文のいずれかに立ち戻って話そうと考えていました。
3. 英文と韓国語の意味を併記して学習に活用
AIが作った英語の回答を、そのまま暗記したわけではありません。理解しにくい表現については、文ごとに意味と使った理由を尋ね、自分の考えと異なる部分は修正しました。それぞれの回答の下には、韓国語での意味と覚えておくべきキーワードも併記しました。
英語の文を忘れないことより、どのような意味で話しているのかを理解するほうが、実際のインタビューでは役立ちました。文を正確に思い出せなくても、理解した内容を、より簡単な英語で言い換えられたからです。
4. Naiaで使用したAIを使い、質問者と回答者の音声を合成して繰り返し聞きました
完成した資料はPDFとして印刷し、全体の流れを確認しました。続いて、質問者と回答者の声を分けた英語の音声ファイルをAIに作ってもらい、聞いてみました。Naiaの開発環境があったため、別途有料サービスを契約することなく、すぐに作成して確認できました。勉強だけのためにまとまった時間を取れなかったので、移動中に繰り返し聞き、回答を声に出して練習しました。
文章を読むだけのときとは違い、質問が終わってから答え始めるまでの流れや、話すリズムを身につけることができました。一つの準備資料を、読むためのPDFと、話すための音声として再活用したわけです。
5. 質問を聞き取れなかったときに使う文を用意しました
すべての回答を完璧に話すことより、質問を聞き取れなかったときに慌てないことが大切でした。次のような文をあらかじめ準備しました。
Could you please repeat the question a little more slowly? 質問を、もう少しゆっくり繰り返していただけますか?
My English is not perfect, so let me say it more simply. 私の英語は完璧ではないので、もう少し簡単に説明させてください。
I want to be careful because I do not want to overclaim. 誇張したくないので、慎重にお答えしたいと思います。
インタビュー当日は、Zoomとともに準備資料と作業中のAIセッションを開いておき、必要であればキーワードを検索できるようにしました。とても緊張しましたが、Lenは事前に伝えていた二つの重要な質問をしてくれたので、準備してきた考えをもとに答えることができました。
英語インタビューを準備するなら、次の枠組みをそのまま取り入れ、自分のテーマに合わせて変えてみることができます。
- 必ず伝えたい三つの重要な文
- 想定質問と英語での回答
- 回答の韓国語での意味
- 文の代わりに覚えておくキーワード
- 想定される追加質問
- 質問を聞き取れなかったときに使う文
準備資料をAI動画にした理由
実際のインタビューが終わった後も、長い準備資料が残りました。私は、この資料に盛り込まれたNaiaの話を公開したいと思いました。全文を文章として読むこともできますが、対話の流れとして聞くほうが伝わりやすいと考え、リモートインタビュー形式の動画として再構成しました。
今回はNaiaの技術を使い、英語練習用に作った音声をもとに韓国語の音声も作成し、AIで生成した画像と動き、オープンソースのリップシンク技術を利用して英語版と韓国語版を制作しました。当初は発話が始まる瞬間の画面をそのまま使用したため、顔が歪む問題がありました。そこで、目と口が安定したニュートラルな画面を別途選び、文単位で動画を作る方法に修正しました。この作業は、CodexがNaiaプロジェクトの技術を利用して行いました。
この過程は、一つのプロンプトだけで動画を生成する作業とは少し異なりました。
インタビュー調査 → 核心メッセージの整理 → 韓英の想定問答 → PDF確認 → 音声練習 → 模擬インタビュー動画
前の段階で作った成果物を、次の段階の素材として再利用しました。英語インタビューのために準備した資料が練習用の音声となり、さらに公開できる文章と動画になりました。AIを実際の仕事に活用する際、一度作った資料を捨てず、次の作業へつなげる方法の一例になると思います。
また、動画制作よりも重要だったのは、私自身が内容を理解し、修正する過程でした。AIは下書きをすばやく作れますが、私の考えと異なる部分を自動的に正してくれるわけではありません。質問し、理解し、修正し、どこまで公開してよいかをAIの助けを借りながらLenとやり取りし、確認しました。
おわりに
今回の記事で伝えたかったのは、AIでインタビュー動画を作ったという事実そのものではありません。英語インタビューに不安を感じるとき、AIと一緒に想定質問を整理し、必ず伝えたい内容を絞り込み、音声で繰り返し聞きながら準備する方法があることを、実体験として共有したいと思いました。
インタビュー準備原稿の全文を公開した理由も同じです。実際のインタビューでは短くしか話せませんでしたが、準備する間に、私が作りたいNaiaと「自分のAI」についての考えを、より長い流れとして整理することができました。動画は、その内容をもう少し気軽に伝えるために選んだ形式です。
英語インタビューを準備している方には、この過程が少しでも参考になり、Naiaに関心のある方には、私がなぜこのプロジェクトを作っているのかを理解する助けになればと思います。書籍とNaiaは、これからも実際の開発過程で確認した内容をもとに、継続して改善していきます。